人生が変わる

理事/当事者として 里見英則

僕は18歳までは言葉がわからない人として生きてきました。心の中では色々なことを考えていましたが、周りからはわからない人として扱われてきました。でも介助付きコミュニケーションに出会って心の言葉を紡ぎ出すことができるようになり、生まれ変わったと思うほど人生が変わりました。

僕は指談で話をします。初めて見る人はとてもびっくりして、「あれは介助の人が勝手に指を動かしている」という感想を持つ人が多いようです。両親も最初は信じられなくて、「僕が話すはずがない」という思いを打ち消すのに半年以上かかりました。僕は、このチャンスを絶対逃すものかと必死で母と練習しました。すぐにできなくてじれったい思いをしたり、母から「わかるように書いて」と言われてけんかになったり、そのうち母に手を触られるのも嫌になったり、もうだめかもしれないと諦めかけた時もありました。でも、ついに僕の言葉を母が読み取る瞬間が訪れて、雷に打たれるとはこういうことなのかと思うほど衝撃を受けて、うれしくてうれしくて母と笑い合いたかったのに固まって笑えなかったことを覚えています。僕の伝えたい言葉を読み取ってもらえるようになるのに1年かかりましたが、あきらめなかった自分と母に感謝しました。

僕は、自分の思い通りに体が動かないために、心の中の言葉を伝えることができないばかりか、自分の意思に反して体が勝手に動いてしまうことで、周りからはまるでわかっていないと思われ、誤解をされ続けてきました。例えば、食べたいと思う時ほど舌で食べ物を押し出してしまい、食べないと思われて下げられてしまうことがありました。今ではこうして言葉で伝えることができるようになったので、食べ物を舌で押し出しても「まだ食べますか?」と聞いてくれ、食べさせ続けてもらえるようになりました。

僕は今、とても幸せです。不自由な体に支配されても、そのことを理解してくれる人が周りにたくさんいるからです。そして何より、僕の心の言葉を信じて、介助付きコミュニケーションで話せる人が増えてきたことに感謝しています。

僕は、このような支援が受けられる環境を他の障害が重い人たちにも作りたいと思っています。どんなに障害が重くても心の中には言葉があり、それを伝える方法を支援者と一緒になら見つけることができることを、知ってもらえたらうれしいです。

「食生態学ー実践と研究 11号」(NPO法人食生態学実践フォーラム発行)P.14-15に掲載した文章を一部修正

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まなざすひと(http://manazasuhito.strikingly.com/)
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木村里奈さん(東京造形大学グラフィックデザイン専攻出身)

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