思い込みを越えて

理事長/親として 里見見千子

生まれつき重い障害があり、言葉がわからない・話せないと思い込んで18年間育ててきた息子が、介助付きコミュニケーションで通訳の方とともに自分の心の思いを綴り始めた時は、信じられないどころか、何をやっているのかと通訳の方への不信感を抱いたのを覚えています。以前から友人に「英則くんも言葉を持っていると思うよ」と言われながら、「うちの子は無理」と思い続けていたのですから、わが子がこれほど色々なことを感じ考えていたことに衝撃を受け、親としてこれまでの反省と焦りばかりが募りました。そんな時、仙台在住の筆談詩人の先輩から「今まで何もしてやれなかったのではなく、そのすべてが今につながっている。みんなが精一杯だったのだから、決して後悔はしないで一緒にチャレンジしましょう。」と前に進む勇気を頂きました。それから「学習会サロン」という任意団体を作り、試行錯誤しながら同じような仲間と猛練習の末、私自身も息子たちの思いを言葉で聞き出すことができるようになりました。

介助付きコミュニケーションに出会う前は、私が息子の気持ちを推し量り、選択したり代弁したりしながら関わってきました。何を着せようかなど日々の小さなことから進路といった重大な選択まで、これでよいのか、違っていたらどうしようなど悩むことが日常茶飯事でした。時には親の都合が優先することもありました。しかし、介助付コミュニケーションを通して、本人に選択してもらい本人に確認できるようになると、悩むことが減り余計な心配をしなくて済むようになりました。意見が合わない時には話し合えるようになり、周りからは「顔つきが変わったね」「表情が良くなったね」と言われることが増えました。今では、教えてもらったり相談にのってもらったり、励まし合ったりなど、お互い協力しあう関係ができつつあり、お互いの自立に向けて共に前に進んでいけることに感謝しています。

「わからないだろう」という最初の思い込みを越えて、より多くの人が言葉を紡ぐことができるように、今後も試行錯誤を続けていきたいと思います。

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協力

写真撮影
まなざすひと(http://manazasuhito.strikingly.com/)
ロゴデザイン
木村里奈さん(東京造形大学グラフィックデザイン専攻出身)

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