カモシカたちは、水浴びが大好きです。水辺に皆で集まり、楽しく話をしながら水浴びをするのです。カモシカの群れの中で、一番の長はお父さんです。お父さんの号令とともに皆で動きます。次に大事な役割をするのは、お母さんです。お母さんは、子供たちの様子を見ながら、体調の変化を見逃しません。子供たちは、お父さん、お母さんに見守られながらのびのびと水浴びをするのです。
ある夏の夕暮れ、カモシカたちが水浴びを楽しんでいると、急に雨が降り出してきました。お父さんが「さあ、みんな急ぐんだ。」と叫ぶと、子供たちはお父さんに続き、一番最後がお母さんの順で、家にたどり着きました。家に着くと、すごい雷でした。子供たちは震え、皆お母さんのそばにやってきます。お母さんは、自分のおなかのところに子供たちを引き寄せ、雷の音が響かないように子供たちをかばいます。やっとのことで雷は鳴らなくなり、雨もやみ、空にはお星様が出ていました。子供たちも安心して、外に出てきました。家の外では、他のカモシカの親子も星を見に出てきていました。星を見ると、カモシカたちはとても幸せな気分になります。カモシカの子供は思いました。
「僕はこの星から生まれたんだ。この星の中で生まれてカモシカになったんだ。そして死んだらまた星になるんだ。僕は、今度は何になるんだろう。またカモシカがいいな。こうしてみんなで水浴びをして、星を見て、こんな生活が僕は好きなんだ。」
カモシカの子供は、星にそっとお願いしました。
「また今度も、カモシカにしてください。また、この家族のもとに生まれさせてください。」
星がきらりと光りました。まるで「わかったよ。」と言っているようでした。
カモシカの子供は、しばらくして家に戻りました。他の兄弟たちは、もう寝ていました。お母さんが起きていたので、お母さんに聞きました。
「お母さんは、お星様になんてお願いしたの?」
「子供たちが早く大きくなって、自分の家を持ちますように。」
お母さんは、言いました。
「お母さんはね、みんないなくなるととても寂しいけどね、こうして子供が生まれると、とても幸せなのよ。だから早く皆が家を、出て子供がいっぱい生まれて、見せに来てくれるとうれしいと思ったの。」
カモシカの子供は、少し寂しくなりました。だって、お母さんのことが一番好きなのに、お母さんから離れるなんてとてもできません。
カモシカの子供は言いました。
「僕、お母さんのそばを離れるのは嫌だよ」
すると、母さんは言いました。
「だって、おかあさんだって、おばあちゃんのそばを離れてきたのよ。離れるときは悲しかったけど、子供が生まれるとそんなの忘れちゃったわ。」
カモシカの子供は、「そうかな。」と思いました。
やがて秋が去り冬が来て、そして春になりました。カモシカの子供は、お嫁さんが決まったので、家を出ることにしました。お母さんは、とても寂しく思いましたが、顔には出さず、「元気でね。」と見送ってくれました。
季節はまた移り、次の春になりました。カモシカの子供にたくさんの子供が生まれたのです。子供たちは、元気で毎日大変でした。若いカモシカ夫婦は、子育てに追われました。カモシカの子供は、母親の言ったことを思い出しました。
「お母さんの言ってたのは、こういうことだったんだ。」
本当に子供は可愛く、何物にも代えられないものでした。
やがて夏になり、子供たちが大きくなったので、父親と母親のところに、見せに行くことにしました。父親も母親も、大変喜びました。帰るときに、母親が言いました。
「時々子供たちを見せに来てね。子供も可愛いけど、孫はもっと可愛いのよ。」
カモシカはそれを聞くと、もっと子供が欲しくなりました。こうしてカモシカはどんどん増え続け、そこはカモシカたちの住む場所として有名になりました。
そして今日も、カモシカたちは水浴びをしているはずです。一度見に行ってみてください。カモシカの親子は、とても仲が良くほのぼのとしてきますよ。
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